なぜ、老人は歩くのが遅くなるのか?

私が51歳の時、営業で協業をしていた広告代理店の会長と食事に出かけた。広告代理店の会社から100メートルぐらい先にあるソバ屋に誘われて一緒に歩いて出かけた。出かけたのは良いのだが、会長の歩きが非常に遅いのだ。足を引きずるように歩いているためそのテンポに合わせて歩かざるを得なかった。

歩いていながら、なぜ何だろうかと思いを巡らせていた。51歳の私であっても75歳を過ぎた会長の体について何の知識もなかった。普通に歩けるはずなのに歩けていないのはなぜ何だと!

老人は、なぜ、弱々しく歩くのか?

若者たちが、横浜の地下街を歩けば多くの老人を目にする。歩いている老人を見ながら彼らは不安定で遅い歩き方をしている老人を不思議に思っている違いない。なぜ、僕たちと同じようにすいすいと歩けないのだろうかと。

老いを知らない若者は老人の歩行問題を理解できない

高齢化と介護の問題が新聞で取り上げられ、老人の足がなぜ動かなくなるかの理由が説明し始めた。加齢により60歳以降から急激に足の筋肉が衰え始めるという事実が広まった。この加齢による身体の変化を知るまでは、自分の足を鍛えるという事を意識していなかった。

「ああ、そうなんだ!歳を取ると体の筋肉が毎年1%ぐらい減って行くんだ!」

特に大きな筋肉が加齢と共にに減って行くという事実。体の筋肉で大きな部位は足の太ももと背中の広背筋だ。使わない筋肉は加齢とともにどんどん減って行く。歳を取ると体を活発に動かさなくなる。使わない筋肉が増える。

若い人は、老人ほど筋肉が減って行かない。減っても筋肉を使い始めればすぐに復活する。老人の場合は、直ぐに復活しない。時間と苦痛が伴う。苦痛を嫌がる老人の体は、楽な方に導かれる。楽を好む老人の足の筋肉はどんどん減って行く。

60歳代から使わない筋肉の量が減って行き、70歳代でその影響が足の動きに出てくる。そのメカニズムを知らない今の老人たちは、動きづらくなった足を不自由に引きずって歩くしかない。

若者は、老人に特別な興味を持っていない。老人の体の変化について知る由もない。老人の立場に立って生活を想像する機会もない。若々しい自分の体が60歳を過ぎると自然に筋肉が衰えていくなんて想像もできない。51歳の時の私と状況は全く同じだ。

若者は自分が出来る事は誰でも出来ると思いがちだ。それが歩行になると誰でもが当たり前に歩く事が出来るから、なぜ、老人はあんなにのろい歩き方をするのか分からないでいる。単純に歳だからとしか理解しないだろう。

衰えた足の筋肉はもとに戻せる

私のように60歳代で筋肉を鍛える事を意識し始めたシニアたちは、スポーツセンターのジムで筋トレをしている。若者に交じってスクワットやベンチプレスなどをフリーバーでやっている。20歳代の若者よりも66歳の私の方が重いバーベルを上げられることに驚いている若者が多い。 

筋肉は時間をかけて鍛えれば鍛えただけの効果を体に出してくれる。年齢にあまり関係なく鍛えれば鍛えただけ筋肉は成長する若い者とシニアとの違いは、疲れた筋肉の回復力と筋肉の成長の早さだ。シニアで筋トレを始めると筋肉が成長するまで時間がかかるが、必ず失った足の筋肉や体の筋肉はもとに戻る。

若者と違って食べる量も違う。タンパク質を体に取り入れる量も違う。新陳代謝量も違うので自ずと成長も遅くなる。

運動習慣がキーになる

運動習慣がないシニアとあるシニアでも相当の違いがある。運動習慣がないシニアは、三日坊主になる。運動習慣があるシニアは、筋トレを続けられる。衰えていく筋肉を維持しながら徐々に筋肉を増やしていくには筋肉痛を感じるまで筋肉をいじめる必要がある

シニアは、筋肉をいじめるまで追い込む体力と意志の強さがないかもしれない。それゆえ、そんな状態に自分の体を持っていくまで時間と苦痛が伴う。運動習慣を作るにはシニアに強い目的意志が求められる。70歳を過ぎた頃に普通に歩けなくなるという危機意識があれば、運動習慣は身につく。

老いてくると階段よりもエスカレーターを使う頻度が多くなる。それは体を楽にしたいという欲望が強くなるからである。駅の階段をいつも観察している。電車から降りた乗客がエスカレーターを選ぶのか、階段を選ぶのかを見る。階段を使う乗客は足を鍛えたいという目的意識が有る方が多い。体重を落としたい若い女性、運動部にいる中高生、足を鍛えたいシニアの乗客は意識して階段を使う。

シニアが運動習慣を身に付けたいならば、体が許す限り階段を使う意識を持つべきである。エスカレーターを使わないで階段を使う運動は運動をするという意識を薄める。日常生活の中で階段を使う習慣を身に付けるだけでよい。階段の上り下りはSTEP運動と同じである。スポーツジムでSTEP運動をするよりも無料で日常生活の一部として階段を使うことで同じ効果が得られる。

足を使う運動や活動が増えれば、筋肉は自然にその負荷に耐えられるように筋肉を増やす。その結果、歩行障害は改善される。

結論

老人の体に何が起きているかを若者が理解できれば、なぜ、外を歩ている老人がノロノロとしているのかが理解できるようになる。60歳を過ぎると体の筋肉量が毎年1%づつ減って行く。この事実を知らないシニアは70歳を過ぎた頃に体力が落ちて来ていることに気がつく。歩く速度が落ちて、疲れやすくなった体に驚く。

70歳を過ぎて筋力や体力の低下をなんとか改善しようとする。医者はスポーツジムで筋肉を鍛えなさいと助言する。毎日の散歩だけでは失われた筋肉は戻ってこない。筋肉に普通以上の負荷をかけないと筋肉は鍛えられない。足の筋肉を鍛える上で階段の上り下り運動はスポーツジムで筋トレをするよりも簡単でお金がかからない。